コンウェイの法則
コンウェイの法則を知っているだろうか。ある組織が存在するとき、その組織が仕様するITシステムは、組織のコミュニケーション構造の鏡写しとなる、という法則だ。例えばある会社に、生産部門と営業部門があったとして、その二つの部門は比較的断絶された部門だとしよう。この会社が業務の効率化を行うITシステムを設計、構築したとする。すると出来上がったシステムにおける生産部門、営業部門の業務を司るプロセスやプログラムも、必ずと言っていいほど断絶されたものになるということだ。生産部門と営業部門のプロセスやプログラムがもっと連携した方が良いシステムができるとわかっていても、だ。
コンウェイの法則は殊に組織に関する法則だが、一人の人間について考えてみた場合はどうだろうか。例えば小説。論理的な思考を持った人の書いた小説の中の人の思考は論理的だろうか。人と話すのが苦手な人の書いた小説の中の人は話すのが苦手だろうか。当てはまるようにも思うし、当てはまらないようにも思う。
コンウェイの法則は事実を述べるだけではなく、それに抗うために組織が取る方法を示唆する。これは逆コンウェイ戦略と呼ばれる。先の例で言うと、システム設計者が会社の業務をゼロベースで整理しながら設計したところ、生産部門と営業部門のプログラムは綿密に連携していた方が良いことが判明したとする。その事実を実際の生産部門と営業部門がもっと綿密にコミュニケーションをとった方が良いのではないかと捉え、人間の組織側を変える、つまり生産部門と営業部門を合併するなどのアクションをとるのである。
個人に当てはめると、自分の書いた小説の主人公が良いコミュニケーションをとっていたらそれを真似してみる、といったような形になるのだろうか。コミュニケーションに限らずとも、何か良い、美しい音楽、詩、論文を時間をかけて考え、そこから自分の人生に示唆を与えるものはないかを考る。そしてその音楽、詩、論文のように生きてみる、と言うのも良い生き方なのかもしれない。