『偏向』は創刊にむけ、月末ごとに〆切をもうけひと月にみなが書いたぶんをそのつど綴じこむことにした。でないと、いつまでたってもカタチにできなさそうであった。同人の過半数以上が定職に就いているため、その生活のなかで持続可能なやりかたとして、書けたら書けたで、書けなかったら書けなかったで、とにかく月が終わるときに活字にするという方式が、いまのところわたしたちにフィットしているらしい。村上がこれを提案してくれた。
そういうことだから、この月綴じに掲載されている原稿は、あるいは草稿のようなものかもしれないし、ときにはただの殴り書きのようであるかもしれない。冒頭の覚え書にもあるように、出来不出来や内容どうこうではなく、この営みが習熟へむけてつづいてゆくということを、わたしたちはなにより大事にしている。それらが積みあがっていった先にまとまりや強度のある原稿ができあがってくればよい。そこからさらに各人の単行本が陽の目をみることができるようになれば目標はひとつ達成されたといえる。そのさいには、『偏向』同様、現在立ち上げ中のロクジュウゴ出版から、わたしたちなりの流通方式で、読者の手元まで届けられる。とはいえまずは、月ごとの『偏向』を心あるひとびとに届けるところから、だ。その先のことはまだ語らない。
各人の原稿に貌をのぞかせる〝想像力〟というキーワード、そして市村の「題未定」のむすび、
〝美しいものに自分を合わせるということをしないなら、人間という動物である意味がない〟
という章句が、孤独をともにしないわたしたちの共有をよくいいあらわしているとおもう、これらをもって創刊準備6月号の〆に、そしてブンジツ思想誌『偏向』出発のことほぎとしたい。
(丙)