〈新自由詩篇〉(『魂のハナ 崖のある街2』より)

白石火乃絵

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不安とは季節の変わり目の内臓の状態か、……右手がふるえちょる……

五節供は皆季節の替り目に乗じて人を犯す悪氣のあるのを避けるためのもので、元は支那の民間伝承であったと共に、同じ思想は、日本にもあった。

旅に出る前、芭蕉さんもこんなんだったろうか。

火乃絵はとおくちかい島へ、ものいみに往くのだぉ

根、(を張る前に遁れ出ヨ

不安とは季節の移り目の内臓のごろつきか。……左手をにぎっちょる……

ごろつきの意味については、二様に考えられている。雷がごろごろ﹅﹅﹅﹅鳴るように威嚇して歩くからだ?というが、事実はそうではなく、石塊がごろごろ﹅﹅﹅﹅し?のような生活をしている者、という意味だと思う。

おれのせいかつ石ころだらけ

 い・チ・こ・ろ・だ・ら・け


 活性化


かつせいかされたせいかつか

いかついせいかくのせいか

 (からす生活 むれもない

 狂鳥 Kyyoccho!


〽三千世界の大海を知らねば。

  人とはなれぬ、修羅からす


不安とは季節の替り目の烏賊墨か、……両手の鳴る音も知らんね……

イカルスの翼か かつせ

いかされたウイルスか

(いかついせいかくのせいだ

   、ろう


 転がる石のせいかつ

それはものいみする少女ひのえの匂い

おぼえてる?

ライクAろう﹅﹅りん、

すと−−−− トトトッ

兎穴の街の端っこ

見えない川を渡るお午さんだっこ

したときのこと はじまりの黄昏

やわらかなあぬすのにおい それは胎宮

からのヒミツの脱出孔 外は崖

Alice's Abyss Az Abused Anus,

少女A 恵比寿ガーデンプレイスがあたしのおうち

少女A' 湘南新宿ライン 北へ、北へ

 (あらし はがなし はなだいろらし

アビューズド、不安とは季節の移り目のごとき兄のせいかつか、

幼女のごとき父の情緒か。

アビューズドアヌスアズアビス、ヱビスビヰル、アビューズ、アビューズ、

少女A もっと痛みつけてほしい、Bになるまで。

少女A' ボーイズ、B.・アンビシャス

bibibibibibibi

城南Bボウイ(ラップ)

トウキョウ いず すてぃる またあ

またあ おっぶ ふぁくと

もんだいになったことすらない

ひとりのバスキアもパンクも

東京 いず ノット すてぃる またあ

上京者のセンスを火乃絵はにくむ

KUNINIKAERE

あきれて物も−−−−(教育しよう、

百年ぶりの地割れ

クニニカエルにうってつけの日

百年ごとのゴゴゴゴゴー

でぃす いず トキオ

東京コーリン

KUNINIKAERE YO

Alice Btaran Crisis ,


C#mの午後の日差し


  5


東京大地シン、…

ANTIバビロンシステム

えろすたなとすぎがんとすD3000プラス

●滋養強壮●虚弱体質●肉体疲労

・病中病後・食欲不振・栄養障害

・発熱性消耗性疾患・産前産後の

えろすたなとすぎがんとすD3000プラス

東京大地震       (シン、…リズィ、ミス・リジイ、…

シーン

シーン


 あぁ

      さぁ

           はじ


   まり

        さわ


さわ

     さわ

          さわ



          (幽霊さんたち、

           軍人さん、

           ひこぼシ

           トラウマ−−−−


みんなでてこーい


 ちょうへんしの始まりだ

 ちょうへんしんの始まり

 火乃絵くんは死んだンよ

 火乃絵くんは甦ったンよ


 〽最終電車で この街に着いた

  背中丸めて 帰り道

  何も変わっちゃいないことに気がついて

  坂の途中で 立ち止まる


RC歌いながら

目黒川からの帰り道

行人坂の途中で立ち止まった、トトトッ

その時だ、オルガンのように宇宙堕っこちてきた


けいれんするぱいぷおるがん れくれえむ


それはただの川だった

僕らのよく知る

         それはただの川だった


 …はずだった

  みなわさかまきゆく水の、

  みなわさかまきゆく樹

  光の

  パイプオルガン

  弾けばいい

  って

  ライクアローリングストーン

  パープルヘイズ

  ジャンピンジャックフラッシュ

  みたいにって

  君が

  そしたら、

  ザネリおちて

  カムパネルラ飛び込んで

  ハラダ流されて

  フナキ還ってきて

  干草燃えて

  5mンなって

  夜に火がついて

  鳶とびたった!

  月が手を伸ばした、


原っぱ 立った


たれも知らない

川だったの。


    −−−−−−−−高津警察署に

        お母さん来て

        ハラダ泣いた

        それは

        誰も知らない

        川だった…

        (ぼくといえば

        もう少し川と遊んでくといって

        橋を渡りきらず

        マミイと別れた


おうい

みんな出て来ーい

そこにいるのはわかってるんだぞー

〽幸せは 空の上に

 幸せは 雲のォォォォ


うぇ!


 6


夢破け、


     山河なく、


   詩だけがのこる−−−−−−

    (その都市のごと

    冪乗された

    無価値に 永遠に

    昏き一票を)


〈崖のある街〉

 地震雷火事妬み


  放射能のごとく

  眠る

  ●


…終日、部屋をでないのである。

 (歩くことを閉されたのでおれには

  死同然なのだ、本当は。)

−−−−この日記にはまだ続きがある

  わが母語がそうであるように…

      (あるひは修羅の十億年と三日)


〈魂のハナ〉

メイドインアリスノアヌス


         たとえばこんな…


 夢のことを書く。お前と死別れて間もなく、僕はこんな約束をお前にした。その時から僕は何も書いていない夢に関するノートを持ち歩いているのだ。僕は罹災後、あの寒村のあばら屋の二階で石油箱を机にして、一度そのノートを書きかけたことがある。が、原子爆弾の惨劇を直接この眼で見てきた僕にとっては、あの奇怪に屍体の群が僕のなかで揺れ動き、どうしても、すっきりとした気持になれなかった。そうだ、僕はあの無数の死を目撃しながら、絶えず心に叫びつづけていたのだ。これらは「死」ではない、このように慌しい無造作な死が「死」と云えるだろうか、と。それに較べれば、お前の死はもっと重々しく、一つの纏まりのある世界として、とにかく、静かな屋根の下でゆっくり営まれたのだ。僕は今でもお前があの土地の静かな屋根の下で、「死」を視詰めながら憩っているのではないかとおもえる。あそこでは時間はもう永久に停止したままゆっくり流れている……。

 僕は夢のノートを石油箱の上に置いて思い耽けっていた。僕のいる二階は火の気もなく、暗い餓じい冬がつづいていた。と、ある日、はじめて春らしい日が訪れた。快い温度がじっと蹲っている僕にも何かを遠くへ探求させようとするのだった。あばら屋の二階には、たまたま兄が疎開させていた百科事典があった。それを開いてみると、花の挿絵のところが目に触れた。すると、これらの花々は過ぎ去った日の還らぬことどもを髣髴と眼の前に漾わす。


僕はあの土地へ、かつてそれらの花々が咲き誇っていた場所へ行ってみたくなった。魅せられたように僕はその花の一つ一つに眺め入った。


カナコ、リオン、ユキコ、ミナミ、カオリ、ミナコ、アヤ、ユリ、サトミ、リカコ、マユ、マリ、サアヤ、アヤナ、ジュリア、ハルカ。アスカ、ミツコ、フウミ、マリノ。