山越えをすれば、群馬の嬬恋村の方へ抜けるのだろうか。自転車がすすめるのはここまで。ここからはさらに階段やら、道といえるのか怪しい山道やらを行くより他ない。
禰津村、西宮地区の城山、山腹に鎮座するのが「宮嶽山稜神社」、通称「四の宮権現」である。村の北西部の端、参道の入り口まではすぐに見つかるのだが、茂みの中に分け入って石段を上り、本殿に行くまでには、しばらくのためらいがあった。当日は平日にして曇り、村の中は閑散としている。森の中へと進んでゆく石段を上ろうとするのだが、如何せん、暗いのだ。ああ、昼でも森の中はこんなにも暗いのだ。本殿まで、いったいどのくらいかかるかもわからない。人気もない。村人が大切にしている神社であろう、石段が見える程度には掃除がなされているが、大切な行事の時にだけ、お参りする神社なのかもしれない。本殿が視界に入らぬまま、どのくらい続くかも分からぬ石段を登り続けないといけない。決断が必要だった。
蜂も狂暴化している時期だ、所々蜘蛛の巣が頭上に見える。つい気になってしまう都会人我は。木の枝を拾い、蜘蛛にあやまりつつ、頭上の巣を取り払い、「安全チェック。」などとのたまっている時点で、まだまだ修行不足だ。何者かに「ぶーん」と耳元でささやかれるだけで、「スズメバチにあらずや。」などと嫌疑をかけてしまう。それでも、石段を数百段登っていく過程が、旅のどの時間よりもはっきり思い出される。石段の途中、巨大な黒い蝶のお出迎え。後羽に、ふさふさのボンボをぶらさげた黒い蝶。捕まえ方も名前もわからないけれど、立ち止まって行方を追う。何年振りだろう、蝶を見て、こんなにうきうきしているのは。そして、ほんの少しの間、雲間から光が森に射し込むと、森の色彩は様変わりする。森の二重人格を知る。石段を登りきると、拝殿が視界に入ってきた。拝殿を