土曜日、秋葉原に向かう。秋葉原には随分と久しぶりに行く気がする。中央総武線に乗りながら「秋葉原 無線屋」と調べてみると「山本無線」、「富士無線」、「ロケットアマチュア無線本館」、ずらずらと無線屋さんが出てきた。「富士無線」はジャンクのスピーカーが店頭で売っているのを見かけて、一度だけ立ち寄ったことがあった気がする。確か千石電商の近くの店だ。ちゃんと名前にアマチュア無線と入っているし(アマチュアじゃない無線の店だったら困るし)、レトロな外観にも惹かれて「ロケットアマチュア無線」に行ってみることにした。
インターネットの写真と同じく赤い派手な看板の「ロケットアマチュア無線」は、電気街側の高架に沿って道路を渡ってしばらく行ったところにあった。昔この辺りの石丸電気はんだごてを親に買ってもらったのが懐かしい。石丸電気も同じような赤い看板だった気がする。秋葉原の人は赤が好きなのだろうか。店内は古びた家電量販店のような雰囲気でひと気がなく、少し寂しい感じだった。当たり前だが、店内にはアンテナや無線機がたくさん置いてあった。数分間、アマチュア無線好きの顔をしてみながら店内を物色してみたが、いまいちどこをみたらいいのかわからない。数人いる店員も販売に消極的な感じで、永遠に声をかけられなさそうなので、こちらから声をかけてみることにした。
「アマチュア無線4級の免許を持っていて、これから始めようと思うのですが、おすすめの無線機ありますか」
店員のおじさんは少しだけ驚いたような、少しだけ嬉しそうにも見えた。あまり新しく始める人はいないのだろうか。店員は、警官が持っていそうな携帯タイプの無線機がたくさん置いてある場所を指差しながら、
「そうなんですね、この辺りのハンディ機がおすすめですよ」
と云った。ハンディ機というのは携帯無線機のこと、というのはネットでリサーチ済みだ。店員曰く固定の無線機を初めからいきなり買うと、家の立地が悪くうまく電波が入らない残念なことになってしまう可能性があるので、まずは持ち運びが可能なハンディ機で始めるのが無難とのことだ。どれも同じように見えるが、1万円台のものから6万円近くするものもあるようだ。一番安い機種を指差しながら、これはどうですかと聞くと、
「これは不便です、テンキーが付いてないのはやめた方がいいですよ」
と小さなボタンがたくさんついた機種を指差しながら云った。テンキーはそんなに便利なのだろうか。テンキーのついたものはどれも2万円以上はするようだ。押し売りなのかなと一瞬思ったが、そこまで高い機種を勧められているわけでもないので、一旦信じてみることにした。
「これ、特におすすめですね、この機種はバッテリーが切れても電池で動かせるんですよ」
店員は云った。
「電池だと0.5Wまでしか出ないですけどね」
今まで無言で後方に立っていたもう一人の店員のおじさんもするすると寄ってきてそういった。他に選ぶ基準もないし、勧められた2万8千円ほどの八重洲無線のVX-6というハンディ無線機を買ってみることにした。この機種はラジオを聞くこともできるとのことで、最悪防災用ラジオにはなるだろう。ここ数日の疑問であった無線機を買う前に無線局の申請はいらないのかを聞いてみると、無線機を買ってから申請する流れだということがあっさりと判明した。
倉庫から無線機を持ってきてもらっている間、高い無線機だと何が違うんですか。と聞いてみた。高い無線機はインターネットに繋げたりすることができるんですよ、と壁のポスターを指差しながら店員は答えた。ポスターにはクラウドのような図形とたくさんのアマチュア無線機が繋がるような図が書かれていた。それはもうスマホでいいじゃん、という言葉が喉の手前まで来ていたが抑えた。何か違いがあるのだろう。
会計が終わり、「少しだけ安くしておきましたよ」と少し誇らしげな顔で無線機の入った紙袋を渡してくれたあと、「あ、この水筒もおつけしますね」と同じく少し誇らしげな顔で八重洲無線のロゴが入った水筒をつけてくれた。ありがとうございます。でも、なぜ水筒なんだろうかと思いながら、70年代からデザインが変わってなさそうな赤い紙袋を手に店を後にした。そこまで高い買い物ではないが、ギターを買った時よりも何故か買い物をした感がある。サンボの牛丼を食べて(ふと思い立ち初めて食べたが美味しかった)、帰宅した。