襞よ潜む。強く湿る。「完備である」

あらいれいか

 いやわかい楔の束が群がり生える鉢の裸電球もまた、さかしまに吊るした池のだんめんびに世俗はない。じぐざの下界までも道は青白い肉のように折れ曲がってたわんでいく。もうすこしまともに脈打つたびに染まった、あいかわらず、萌黄色と計測不能にした。
 かるい荷物は湯に浸して刃物を奪い茶碗の飲み口に欠けたあと。前を向いていく警笛は言葉をついた。と苦言するか。
 まあチューハイを一口のんで受け流せよ。
 両足を投げ出して語り合う奇怪すら与えられないから、束の間、蛇のよう燻る。心なしか彫り込んだ口許にコトコト剥ぎながら、やわっこいこと、セロファンにくるんで、裾をひろげて受ける。これは ∞の字が娘の事例。「曇膜」だとして、やはり間違えなく遠くへ裂かれる。
 それはそうだがガラスの靴、ひとつだ。そよふくには びびしいみの、若葉は回る。(あゆみにぶる÷かたさ×ひゃっこさ)冷え濡れて枯れしおれた花も寒かった。(蹴りつけて 惨みつけて わあわあと瞬き おまえはなにもしらない、と叱る)──瓶から漏れる遺書、鈴が鳴らずになれ、/あなたとあなた以外のあなたに、うすいたかさに打ち込み、よわい雨水を描写する。
 このような無は、はなしゃくれた峡谷として 赤い、樹木の梢の先へ どこか結晶化している。感触は首筋を下り、繁殖するはらわたをぶちまけた、すなやまのてっぺんから斜めに光線と畫く。骨を引き抜いた次の日に酷似している ちぶさやまた、染み入るふうけいは横顔から飛行機雲まで、指先を貼り付ける。ここはコンビニ惑星
 
かつて水が存在した
 やがてみつめれば、砂漠の薔薇トワ虹彩のことだ
  ↓ ずさんな鳥かごの意識ともっ
 それきり黙ってかき分けてはまたゆびおり数える
  ↓ 旧あゝるこうどは潑っているだろ
 いつしか、ほんにかすれた明星が、ぽつねんと首をふる
 わがのかお。待ちくたびれていないか
 =もてはやしてしまえば、寂しくは、ない気づくと寂しい顔になった
 
   *
 
 あなたは乙女でも少年でもない翼を万葉とする。ひゃくぱーせんとじゃあないんですが もぎたての果実のような香りにへばりつく。 白鳥のうたを懐柔にする。また芋虫が立ちあがるような黒い手脚が退屈そうにしている累をみつけた。ありのままの睫毛を知っているか。
 もう虫籠に囲うけれどビー玉のメッキ、あざやかにきざす咀嚼の網からちいさな紅葉、爆ぜていた、散策路に星霜と架けてくちびるに埋めて、いざ擦り寄せた河をくちゃくちゃと吐く。
 むろんふうんのアザミの裏でチラと撒き散らし、しぜんと沈黙し、無人のオルゴールが蓋を開けたまま、栓をしておもさに相当する まばたき。複雑にもつれ合う木漏れ日に手を焼いたくせに、手先をひらり どの背もすり抜け、きおつけて/なにを/ひかり。みるのも嫌でたまらない。煤を域に溶かし、すがるものが欲しくて息をつく、失われた朝で。溢れてしまう。鎮める喉がパタリパタリ、シーツにへばりつく、蝶でも蛾でもない。ほざく。
 存在しない果実の塩分を探る。ぬぎすてたカフスを禍つける眼差し。無責任にも迷っていた。角は、丸みかもしれない。ネオンに寄せてぼそぼそおごる あけっぴろげな夜明けでノソノソわめく。こともなげに猟銃にほおりこんだ信号がちらつく耳鳴りのようふくまれ、いきさつは柔らかく射し込んでいるというから
 
 波打った針の唇 みなぎったあと。終わったことだけが言葉より先に曇りを学び、くしゃみのよう裂け目をひろげ、撃つ鳥よ 強度はない。「気がつけば」朱焼けの市はひとしきり、谷のように詰まった障子の透き間から、みなも 霧をスゥと潜り込み、しぶきはゴァと雲とを踏み分ける すべてはどこ吹く風、僥倖
 強かで温い鏡をまた撹拌し 氷砂糖の手触りで、噛むと甘くなく、捏ねるのが容易で、沈殿した首から下げたなにかしら たゆたう亡霊の名が破砕機へ落ちてゆく。ただこの眇だけが葉に残る。薬缶にいれた水が圧縮するたび、等量の参別にする。締めくくる口の灯りに 半開きの戸棚とは 紙+グラス+くるぶしの、うらにまるめられたツバサに刻まれた、腥い棉花で輪郭をなぞるが、結ばれない肉のさざなみをたたく扣く
 
 ながいあいだ鋭く 円をえがいて反射してくる
〝見当がつかない〟はればれとしたかおをして
 
「めぐりめぐって」は手を振りかえす
 
  燃え立つ今日の見取り図はどうだ
  ふと思わせた気配さえ消える部品箱は
  もえさしのみちすがらは
 
4:44やんぬるかな
 
 はだしのひとりは早足で進む。盲目のかじりつくいずこへ甘ったるいかしこだ。気づかぬまま集め滴下する、うつくしい暗色のふるきものは。帯に引き裂かれ手首まで抱え込む。わたしは息を忘れないように忘れ、そのびしょうは濃くした影を少しだけ軽くする
 唐突な問いだったか、たなうらであぶれていく
 ぶ然 ぐズレた鼻につく、たばこ踏み鳴らす、あわだつ池の周りに抜ける そして、翳す 縮緬の点線 数ヶ月の読点、、、直ぐ側に行って いとをひいたプリズムの いとめのように細め立ち入った瞼を閉じ、やがて蛍となって掌から剥がれ落ちる 平行線のはしごをたどる 鉤針編みの いばらの蔓も絡みとり、ぶらついて摘むしぐさ、おっぽがはねあがっては。へさきへまがります
 ただ幼犬の頭を撫でぼぉと傾く。外れ、切れないで伸ばしたり平らにしたり、どの方向にも思い直したように 欠けた部分をかがり、引張ることの。彼方なりの砂時計に羊水を注ぎこむ。もろい妄執を反射的に揃えられたからだ あらたなる管楽器をうずめて
 ねえ、終わらないことがわたしの指へと伝わり、どれも匂いを溜めている白金箔の上にのせて、床に糸くずが重なり、油照りで嗄れた赤ンボと搔き分けた音情おんじょうを、
 
 文字に似た軌跡をつくる。ふつふつと染みを膨らませ真実が含ませる、ぷぅと見透かした粉末状の実態──こう、減らすにも増やすにも、両手はリボンを重ねたまま。歯形残した群れと爪あと
 秘しても均しいか。だれもみていないから冷たいまま、どこか聞いたあとで走り出す 声。鈍行列車、(仮)に女 ひき攣らないよう凛と這ったウロ白椿ゴ蝶黒白唾奇乎鳥に目を向けて、ひいて 花火とした
 すとんと隔てられたほねのかけらはいまにゆっくり引き起こす。これは綿毛でも種子でもない 迎える触りそのもの、透明な腹のウワグスリが飾るように鍵盤の縫い目刻まれ、たおるじのフカフサ、勘違いしてはならない星雲がにじむ
 きみは わからないまま 声にならぬ声を食べた さらまんだーサンショウウオ
 無数の噛み傷がうたうものではないが、体液が透けて揺れる。ささめきこと伝言、と自嘲するゆくえとは、ふみしめて とびはねる風──。それきり静かになり胸や腿が飛び出しそうな勢いで、ぶちてくわんるーむに四つん這いの望は。ああ、巨大化した ぽつり。ぽつり。とざつな遊離。何時か、つきのあかるい晩。器の中心で、襦袢のふりをして、
 ふり戻す くれよんや万年筆で、たったひとつ。ように裏は飛沫の、沈降する大空の架線が節を凹みに薄墨を焦がしたが いまなをひろう。ほんのスレスレに滑空する。礼に折れず引っ込めた躰を、(後退る。だから翻すのか、)
 
 やわらかな風が折れずに曲がる、線に沿ってなぞるように
 生々しい行方を記すように、ボクの。おなかぐらいの焚き木に渦を蒔く
 
「ヴァルハラと投げ打ってください」
 
 まばゆき一色の束ね、また ねを閉ざした、まさに彼方に尋ねる。眠気の森が意図にからまる。押し潰される悲鳴のようなときが苔を績む。夢から覚めたよう喉元から開放せよ。ただ青に舞い込む。くちばしは風ではない運動のひとつ、こうして排気のこもった匂いをふくんだ、折を脱ぎ捨てながら、くいこんだ月虹が紡いでいる、
 拙いナアあすを迎える気配、二階の住居はさいあく断層のような蛸足で這いずる。そういう食べ物を口にした。そばから別のかたちへ──ふりむきざま指先でさわる はじめから腐りかけた、よるのそら。さいわい、添えられていた。舌の上で その水に全て溶けたら、幻かく的な皓い羽毛は明透ない摂理と交わろう
 ただ深呼吸を忘れて立ち尽くし、ひらけたところから力を抜いた重力がうっかり位置を持つ〈袂におとしこむ/受け止めて黙する〉アンティークのひかりをみるくいろに流されたひとがきに ちいさく小綺麗な刹那を掘削する。この比喩は絨毯とゆき──にえる虚境が泣き出して、指が沈むまで決しておさまらない
 
 デタラメにからかい分解された目蓋に縫いこむ。熱されたり燃やされた祠ではなく18のあいだ──不在が増殖する。いつでも名もなき花。むいみにしんだ、かわいらしい水をかけられたみたいに寒さを饗しては、トランクを持っていない 嗄れ声、いろのしろいおんなだな まあ斑点だらけの星座が焼きつくパターンはすり鉢を反転させたような、せせらぎ? 違う。キツイコトバに預けて仕舞う耳殻に木霊し、意識とは好奇心におもえるそれから
 
 両手で掬いあげ 余地のない腹を満たす
 化現奏ケゲンソウは胸にイタミがありました
 指の間から零さないよう飽和するまで抱えこむ
 
襞を覗き、襞を埋め、襞を裂き、襞を縫う。襞よ潜む。強く湿る「完備である」
 
 どうせ口を開けて待ち構える水夫が、細いひびが現象として受け止めるとき。ひどく乾いた湿度の摩擦。すべて即座に溶け、それからまろびでた舌の白い鳩。畳まれた山の西へ下って、櫂をふさいでいる。気がつけば──喝采だけが浮上してくる。
 赤子がはじめてを感じるように、その言葉もまた、喃語のようにあるのというのに──なぜそんな簡単な手探りが、難しいと感じてしまうのか。
 
(せいぜんとならぶ、銃架にふとる、てまえを見受けるところで)
わたしたちワルプルギスはひかえめにわらっていなければ鈍くなってしまいます
 
 口にしたものを舌にのせ味わい、もはや感触を確かめる。孵化した楽観がまた脱糞した。土は祈りに杭摂られ、また砂が埋める・また根が絡めとる。すべてが その場しのぎで、このさきはゆめ結芽。端はどこにも繋がらず先の受け皿は逃げ続けていたが、折り畳みのテーブルにCocoroをつなぎ、また白い布を画鋲で留める。炊婦が液面が揺れを吸う〈空洞が/肺が膨らんで。影を割り/面を生む〉

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