アマチュア無線を始める

市村剛大

さて、無線機を買った。まだ無線局免許の申請をしていないので電波を発信してはいけないのだが、受信するだけなら問題ないらしい。アマチュア無線用語で自分から発信せず受信のみを行うことを「ワッチ」というそうだ。初心者はまず数ヶ月は「ワッチ」しておけ、という意見をネット上ではいくつも見かけた。2ちゃんねるでいう「ROM専」と云ったところだろう。

八重洲無線のVX-6を組み立て、説明書を読みながら触ってみる。--わけがわからない。しばらくパソコンとスマホ以外の「機械」を触っていなかったが、そういえば子供の頃は説明書と睨めっこしながらラジカセやビデオデッキと格闘したのを思い出した。たとえば、多彩なメモリー機能があると書かれているのだが、使いこなせる気がしない。この途方に暮れる感じは、おそらく実際に説明書を見ていただいた方が伝わると思うので、リンクを貼っておこう。(https://www.yaesu.com/jp/manuals/yaesu_m/VX-6_J.pdf

ラジオと同じ要領で、DIALつまみを回すと周波数が変わり、VOLUMEつまみを回すとボリュームが変わることはなんとなくわかった。また、受信するとランプが緑色に光ること、「BANDキー」を押すとバンド(=周波数のグループ)が変わることは理解できた。この無線機は504kHz~998.990MHz=(998,990kHz)まで聴けるようだ。(通常のAMラジオは520~1600kHzくらいの範囲である。)一旦わかったことを活かして、片っ端から聞ける周波数の音を聞いてみることにした。ある種の旅のスタートである。


【周波数をめぐる旅】

[1] 中波帯 504 ~ 1.791MHz
いわゆる、AMラジオの周波数帯である。NHKラジオ、TBSラジオ、ニッポン放送、文化放送。小中学生のことよく聞いていたので周波数を覚えている。意識していなかったが、こう並べてみると、とても低い周波数の電波なんだということがわかる。知らなかったのだが、AMラジオは経営的に運用が厳しい局も多いようで、FMへの転換や廃止などが進んでいる局がいくつかあるようだ。(https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/housou_suishin/am_station.html#:~:text=A4.%20AM%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA%E6%94%BE%E9%80%81%EF%BC%88%E4%B8%AD,%E7%AF%84%E5%9B%B2%E7%AD%89%E3%81%8C%E7%95%B0%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)AMラジオ→FMラジオ→テレビ→インターネットというメディアの移り変わりのなかで、AMラジオも消えてゆくのかもしれない。
[2] 短波帯 1.800 ~ 29.995MHz
この周波数帯の電波は「電離層」で反射されるので、天気によっては地球の裏側から電波が届くこともあるそうだ。いくつかの「ビー」という湿ったノイズを拾う周波数にヒットしたのち9.885MHzで異国の言葉が聞こえてきた。調べるとこの局はタイのBBC ナコンサワン局だそうだ。スケルチを外すと人の喋りごえが聞こえるような聞こえないような、世界中のラジオが入り混じる周波数帯である。

[3] 60MHz帯 30.000 ~ 75.995MHz
この周波数帯は防災無線に使われるそうだ。街のスピーカーから夕焼けこやけが流れていることがあると思うが、あれは防災無線のテスト放送も兼ねているのである。東京都では以下の周波数で放送されているようだ。(https://drive.google.com/file/d/1Z-UC4VHbIw7SxAeJHds-hZI9U5NBKKd-/view)残念ながら普段は静かなバンドのようで、ノイズ以外は聴くことができず、このバンドは抜けいく。

[4] FMラジオ放送帯 76.000 ~ 89.995MHz
この周波数帯は名前の通りFMラジオの周波数帯である。このバンドに突入すると、VX-6はAMモードからワイドFMモードにきりかわった。そして、各駅停車のように無数のクリアなラジオ音声が聞こえてくる。AMやFMというのは変調、つまり音声を電波に変換する方式のことである。AMが音声の情報を波の振幅(=高さ)を使って変調するのに対し、周波数(=波の細かさ)を使って変調するのがFMである。実際に無線機のダイアルを回してみると、これまでのバンドではピッタリと周波数を合わせなければ聞こえない音声が多かったのに対し、FMラジオは上下0.数MHzズレた周波数でも聞こえるし、他の局の音声がまじって聞こえることもあるとわかる。周波数帯を贅沢に使った変調方式であるということが体感できる。

(続く)

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