ひととおりの眦と

あらいれいか

 たまらなく眩しいようでおなじ色にしたばかり。まだ砕かれまだ潰される。私が私のまま ふれることなく存在していただけ。こうしていたいとそうしたところで目を閉じてもムチャクチャなのはわかっていた。午前二時の消印に擬態して等身大の啓蒙みたいな 座敷をうろうろする他意はなかった。おぼつかない伽藍ともオオルリのムクロはみられなかった。もつれた水気が肺腑にみる。ここもまた尾をひいたような隠し子 
 のんきもののお化けのように(ふりほどこうと風は窓を醜く叩いた
 わっという仕草で、すくんでいた。)街中のタラップが露わになる
 まもなく押し黙った慈雨がとりみだして
 じゃあ口惜しいと訴えている耳に似た鱗を航むる翼よやけに、おまえは胸をうつほどに萎んだ爪に溺れきりちぎれた蛹でむき出るまえに時を宿した。それから古びた建物にぽつりと灯る短い時間がひとしきり、ノイズと見つめ合う、そのときに、どのように文明に砂煙にいにしえに咲かれ、乱暴に仙花紙を覗き込んで、これら多面体の後世と漏れた先で透きとおっていって、けど崩れだした濃淡と足跡をたどりそれにも拘わらず、抑揚がつながると、
 ひたすら祈っていて
 ふらふらとうずくまる(弾みは、)
 余波なごり。渦巻く質量も他界した常闇は気弱に彩雲をのぞいては 僅かにふるわせたものがお通りになるそぶり。散華している炎が曲がっては添うように、もうすでに十字架に目を留め。見知らぬ薄曇りのそれだけに、戸惑ったように。あるいは左手に海が減り不定形の種が写った背中の顔に、知らない間柄だって差しだされる動作はやがて足を止め 別れを揶揄し痛みを示唆するとこで。異邦人と称しても

 なぜ ヴィンテージの太陽を、ほしのひと と呼んだのでしょうか

 開け放した浄蓮の月燭と雨だれの、ぬくい乱れ髪もただ告発するなら 豊穣/蝶番 おおげさな熱をどいたすくいとか、暇を持てあます繊細なつよさとか、ぜんぶうんでしまって、北極星のまわりで濡れる鳴き砂も縋ることもない
 この満ちはならば善とは、こともなく童心へ/そういう、ちいさくてあったかい大丈夫/(計算され尽くした)かんぺきにびしょうの座。どこまでもはなびらとはらはらと、契りを無すんで、かわいそうなこの手が嘘をついたのが、ふりだし、と/ひとよんで。このデマカセ感覚がのこる構図をとる
 よなよな:畜生! 濤声と昏れてやる/打ち寄せる
 せめている、なかに知らんぷりで、転がる繭のこととか 紙吹雪では? いつだって前を向く。誰もいないと、思っていた。なんてこと! へぇ~ とうとう言葉が見つからないから裸足で耳を澄ましてみるけれど、ぶらりとどこかあまねく、
 酸鼻は水の出がぐっと詰まって、(やっぱりイキがツマって)儚いだけでした
 あのね。てのひらを傾けながらひだまりがおちる/とけゆくさまを ポケットから、迷いやすい裸電球の。密室。で、むかしのこと
 だったら。織り交ぜられたひとすじの 老木の温もり、土壌の匂いの浅瀬に漏れる間隔、抱いているであろう薄っぺらと傍らにあり よい痴れたら、急ぎ足で小走りに生じる岬とした、いつか、流れゆくままに何処へ行くの/くりかえしながら。消え鋳りそうな旋律と和解するゆめも理屈も、冬とは幼少期のどこか
 あり・きたり。それを輝石というのか
 ぽつぽつと囚われず騙りはじめる口もなく帰宅してタバコをくわえた。基礎はかげろうのようにお尋ねになる「一等星や、」しみったれたひかりに運ばれると記憶と「──やみよ。」ぐっしょりと投げ入れられた意思の、ゆっくりと漂っている静寂ほど滑り込んでは 足音も立てずにやってきた大海原があがってくる

 わたしとわがままと、腕時計は招かれざる客ですから そういえば、(ひどくはげしい風をずるずるとあびる)繊細に密封した仄影だ、海に覆われてみっともない のりしろと生臭い匂いが睨んでいた
 (おやすみ)無邪気によい羊の楽団。見惚れたり憎んだり 乱反射して歩くのが好きだったあなたも。またよわかった存在なのですから わたしひとり、無意味に退屈になるのです
 (わらうと ちいさいじが、のみこめないから あくまでぎぜんしゃはこたえなかった)
 だんぜんしあわせだった。まだひとつのいのちに 陰影が逃避した花のそのイシの、檻。とまり木の風に似ている。澱、幾許かの葉は羽音ぐらいに
 巡礼路にちかづいてくる。波の花を目眩と喚ぶことは ほんとうの、すこし ゆらめく/理由は あおいすべり台のルミナスの模型になれば
 ただかなしみのあまりうつくしいのですね。置き手紙でも考えただけに。むしろ残滓の逆光は、未だ目についたところから今の階段を大回りし、どこか着床する天球儀の重しが 黄昏の元へ縫い上げる糸のハシが増えてく。──縷は掠れいまや おぞましいほど 真っ青な広い空。ひたむきに閉じこもった虚、もう統べて、よこたわり 沈んでいきました

 くしゃみをするのは勇気でも結論でもない
 とにかくそうだとうすくわらって
 バカ者共が童話みたいに

 想像して。意図をつくり遷移をつむぎだす。インチキですよ。早く逃げ出したいような時が止まるような感覚で、けれどそれはそれは構わないで。ふしだらな土手を代萩をカーテンに、見知らぬ夜明け前に要るモノを探しまわる木枯らしだって/ただそこに有ることで、めいっぱいの門をぬいても走り去っても。またどうぞ。キレイなだけの皮肉、どうしてか散り易いのに
 弥立よだつ天を仰いだ わずかな田舎のとき、へなへなと坐するあたり。鞄ごと身を預けた 語りかける歩行者天国
 総ておなじ今、やわらかな芽吹きを色鉛筆で描いた
 来た! 来た! このタクト(枝)をるの
 いちばん平静を装った斜面はずりおちる推量に消費する風にある 私、として。なるほど空世辞の行進曲かな、これでロバは馬鹿にならない? 道連れは手本はどこからともなく響きわたる断続てき鹿の声

 ただカウンターに、水差しに ひのひかりが そこにいました碧空が 騒がしい在来線が 追想するオアシスが。冬、または多少のゆとりをもって珈琲屋で、つめ統べるように唸るばかりの、絵空事とあるものをおおきくして

 聞こえるな。ぼんやりして、混じりだした養分ではうるわしいと誇らしげな。メタセコイアの並木道では終わりがみえない
 人気がなく明らかに足止めして珍しくもない。以来、うしおの表面をなで上げながら、けもの道と考えられ、得体が知れない目つきでゆらいでいる 唯、そっけなくのどが渇いていた私は。背後でライトを消して、ひとりきり(影に隠れる。)
 そして野良犬でも飼い猫でもいわせれば、くるぶしは要約無地に致命傷を迎える比重。ただ淋しいとか冷たいとか結して寧色だけがみんな、
 こんなにも小首を傾げた細月がぼうぜんと、てをあわせるようで 悪びれることはない。だらしない照射を(湛えているなんて。)わかっているか。そのうえに 腕ずくで包まっている水脈に、一生。月魄射影にあって目が覚めるだけの アンプルに、問いて
 シスターは口を閉じた。なんという丸で腸詰めにして割れる歯車のセカイ。しばらく考えて。食い荒らした追憶は車内灯を消す、そうして蕾を持ち歩く速度にちかづく。そうだ! つむじ風ごとくれてやる。ビスマスのなにが正しいか。おおげさな調子で珍しく真剣な声で

 ──なんども、かがやきを捕まえるには やっぱり立ち上がって あれから振り返りました
 口に入れたおはなしは生き写しに、うろうろして脳裏に向いてくる。そして相槌を打つ 私は、なだらかな足を投げ出して ちろりと口をつぐんだ。立ち去ってから手を繋いだだけの気がする/雲が掛かり鍵を握る
 ゆっくり動いていくのをみている。ここに、傲岸の菊に見劣りした痩身も一度崩れた、普段 塗りつぶされた柄だ/この手は、せいいっぱい、なにも持たずに完璧を保ち続ける迫真の演技でしょう
 純然な火脹れに障る仕草だからキセキに成らない、断言──

 そこへゆく、ゆくための今が、いまそこにあったようななかったような。ほんのすこし口を継いでくっきりと移りだす。誕生する暗号を「一通りの眦と、」おいていった。だが今夜は顔を上げるといくつかの橋が架かる。不自由で他愛もないから愚かだった、海図なき後悔に題の字をひいた。折り目正しい風が偲びなく嚥みこむから、また欠けた爪を砥ぎながら 欠伸をする蛍雪が漏れる瞼をのぞかなくて、はらはらと あゝいやだわ

目次へ