くだんのために

麁(あらい)

 どこへむかって 富んで征くのか?
(じつに青い鳥とは悪意であろうよ)
 なにをおもって 演って来た?
(みじめに 揺れたのですよ)
 つたえることもなく、みえやしないか
(極限を おもいえがいたときに) 
 さてね、あらわれるものだから

 この國國の一点に細い群れの白昼夢は不協和音の彫刻。てばなし。幽かな指の間をすり抜けて、ほらね。泥を塗る。ひとびとは巧妙な多幸感のまなざしも擦り付け「星のめぐりを試す」と云い──絹の付箋に示された腐肉の正解が耳目に触れる体積は、せわしく啜る昼顔の露におなじ
 モダンな葬列があらわなボロを広げては沁み入るようなランプと灯し続け、存在を握る手が「わたしたることを、ただぞんざいに土に飢える。」アカツキはますます強くなり、たぶん室内はざっと数えても底しれない它翅、垂れ流したアクビであろうが

 たしかに手招きを模倣し運ばれた瓶と巣を、
(受け止められものと結びついたものを解くには容易でなくてね)
 または制帽と羽織を冠るように押し付ける。

貴重なる海の破水されたぬいぐるみのようで蝋細工である蛆虫の196ピースが
無数のそれは無数の、残骸は肌に触れるとおどげでないものの誹りとして
窓窓窓に囲まれる。片道切符、苦い快感と共に2歩歩く。葉音に群れる大事な誓いだ
どの歪んだ顔。全身でわらう花を 我らをなんと呼ぼうが。燐片に備わる露骨な妄想だ

  ダイヤルを回し/新しいラインにのせると
 ──ほらね 柳の下のような気がする予。
 :滅びた後も存在すると考えられることも多い
   未知とはただただ かぎりなくにせもの──

 言いかけた言葉が強引に仔羊を柘榴に戻し、塞がれた風穴などまっすぐにモーテルへ続き、迂闊にもがれたのだから仕方ない。癇癪を熾した、たましい
 韜晦のランタンに近づくと黒く 変色していた蝴蝶もこちらは、複雑な爪痕をやどした塒に 薄化粧した数珠はしめり、袖に隠して置いた循環。あげつらうインクのしみに正午を打つもよおし、艶やかな鳩時計があればいい鴨。スマホの奥でよだれを垂らすおくゆきこそ神、不自然な鷺の種を蒔きどこか水に流す印象、故意は乞いを語彙に敷き詰める 焦げたてんびん。混ぜ込んだのは薬剤と大小の活字、それと灰と秘蜜だよ

 ものぐさでもわるびれないから〝だれはばからず たれまく〟発作のよう黄昏に染まり、彼はざわめく木立の。この狂いの原因は、道楽の議論、あゝ僻地の風通しも元気か

 鮮陣を疾走っていた/ですが旅鳥はその過程で立ち上がった/私を照らすのは無影灯、どこかへいく。だがきみでありぼくであれ生命とある。システムは无悲観に肯定する/かなたの海もあたいの山も、知らないところで。宿主は装飾の施された見世物小屋に絶えず経ち自由に選ばれる、にぶい姿態はすべて響いていた。あおいかべに消せない嶌影(その犠牲のうえに。(その代償に架けて。

 賭して惨めな格好が畫かれる常々は末路など啓かれず そんなものだとて石を拾っては、お花畑にみえるならそれでいい。用途も要点もない幼稚な色彩にありつづける

  汝、しかいがふみしめると──なにもかもわすれていく
  ステンドグラスの焦土ですかねぇ
  信号も交差点も三途の川ばかしの綿菓子が熔けて痙攣した
  ざわついた骨が黙劇の訪れ、どうせ詩を唱えているばかりだ

かくしてこの初秋のことである。
不規則なある物のように、不条理にある者のように
──わたくしは死んだのですよ

 過去の未来へ切断された鏡面に萎縮し、剥がれた夜気がヌメるように無常にも微笑った。綾がいくつかにわかれ のたり、あっというまのこと、古びた風に呑まれて 光沢の波に紛れて
 また、お静かに、白い海は。
「序曲でも失明でもない。まだ感じられない。時は聾唖であり、綻びかけたなにか。」だとして 追い詰められた闇の底に空想を交えた荒寥が犠牲にした、煌々と灯る、ケモノミチに。きりきざんだ潮の流れをも見つめながら、あわただしい人生の深淵に孕んでいた游び場は、水切りの塚とあしあと。わざとらしい感嘆の溜息が暮れのこり、念と透明に鉤爪の恒星はひとつかみ。とばりがまた映し出す、ことわり故 恍惚と舟に浮かび──あゝ精神は風見鶏。不甲斐なさとでも硝子の笈に湛め。異なる数の手足を持ち 今あるヒカリが跋扈する、胎盤はめまいと共に瞑想的なもので。怒りの味がするほど感覚は低い低い瞼で。じつと上澄みを未饐えてゆく
 
 旅立つこともなく極端にのろい切り傷がズレたミクロコスモス

 /ピンホールカメラからみどりごを覗く、凪
   またうまれうまれ、そらへゆくゆく
 /コカインでもヘロインでもあるけど
   鉛筆でセカイ赤ン坊と書いて掌に蠢いている
 /輪廻など持ち込めやしない
   途切れた約束を。お忘れになられたからまた
 /ささやくように さざなみだしたという
   まだ聞こえない、入道雲が沸き立つまでの距離だ

 重なる檻を形成した花のかおり 秘色はまだ窺うようで、瞬間の、不格好にうわずらせた合図も恨みのまた、ざわめく植え込みが 横目で彼らを見ながら、白線の たくしあげる裾を、浮き橋に はだけながら、途はぞんざいにへばりついて、白痴という死体をみなぎらすなにかが 口に放る、
 できるだけあるべき姿を縋り付くように愛称を勃たせた、大きな縫い針で 私はSOSを発しているレコード

 泥舟もまた自らの手。抑圧のどこかで外したものでは無いと、またスイレンは朝まだ浅い、みみずくのこらと。この心臓に暴かれた楽園。終わりなどまざまざとカニバリズム。全裸に近づくように

 眼鏡のしずくとひかり、ともに弾かれしゃがみこんだ時 すべてのものを見た。
(冷えた指はしらない。)くだんのために
 :また少女Eiserne Jungfrauは、ほんのすこし
  きれいだった、ことを、おもい かえしては、いたのでした

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